近年、注目度が高まった空き家バンク
「空き家バンク」という制度があります。
空き家になっている住宅物件の情報を、市町村をはじめとする地方自治体がホームページなどを利用して提供するものです。
運営する自治体は、地域にお住まいの方から空き家となっている住宅の情報を集め、公開して広く提供し、そこに移住を希望される方を募集する活動を行なっています。
この空き家バンクの精度は、20年以上前から行なわれていたのですが、広く知られるようになったのはここ数年のことです。
都市圏から地方へ移住を希望される方の増加、地方における管理不十分となっている空き家が増えている問題の解消を図るため、この空き家バンクの精度が見直され、広く活用されるようになりました。
空き家バンクは全国で統一された制度があるわけではなく、各自治体が独自に制度を設けています。
そのため、自治体によっては空き家の入居に際して助成金を出すなどの優遇措置を設けているところもあります。
登録された空き家は売却希望の物件が多く、全体のおよそ7割を占めます。
空き家物件の購入方法
空き家物件の取引に関しては、直接交渉と関節交渉の2つの方法があります。
直接交渉は、空き家物件の所有者と直接売買または賃貸の交渉を行ないます。
所有者と直接交渉をすることにより、仲介手数料か発生しないメリットがありますが、不動産の知識が少ない方が「価格が安い」といった理由だけで購入すると、あとで思わぬ落とし穴に気づくことがあります。
たとえば、その空き家が古くなって住み続けることが難しくなったため、解体して建て替えをしようと考えたところ、再建築不可物件であったといった例もあります。
それは売主の側も気づいていなかったため、責任を問うこともできず、高い買い物になってしまいました。
不動産のプロが間に入っていれば防げていたケースでしょう。
関節交渉は、空き家の所有者と購入希望者の間に不動産業者や宅建協会が入って仲介を行なう方法です。
信頼のおける業者であれば、空き家物件の内容について十分な調査をしたうえで仲介業務を行なうため、空き家の権利関係や素人の目ではわからない瑕疵などを説明してくれるでしょう。
業者が間に入ることで仲介手数料が発生しますが、所有者と購入者が素人どうしであることに不安がある場合は、プロである業者に仲介を依頼すべきです。
いずれにしても、空き家バンクは所有者と購入者が連絡をとれるように引き合わせるだけであり、仲介までは行なってくれません。
空き家バンクを利用する際のメリット
1.掘り出し物といえる物件が見つかることがある
空き家バンクでのみ紹介されている物件も多くあります。
不動産業者に売却を依頼すると、売買契約が決まった際に高額な仲介手数料を支払う必要があります。
そのため、空き家バンクを使って住宅を売却したいと考える所有者も多くいらっしゃいます。
不動産情報サイトには掲載されておらず、空き家バンクにのみ掲載されている、掘り出し物といえる物件も多く見つかることでしょう。
2.農地がセットで売却されることもある
地方によっては、空き家と田や畑などの農地がセットで売りに出されていることもあります。
地方に移住して、農業を始めたいと考えている方には、住居と農地が同時に入手できるメリットがあります。
ただ、気をつけなければならないのは、農地を売買する場合は農地法の適用を受けるため、農業委員会への届出が必要となることです。
特に、田や畑などの農地を宅地に転用して家を新築する場合などは、事前に許可を得る必要があるなど、厳しい法規制がありますので、十分な確認と注意が必要です。
3.地元の情報が掲載されていることも多い
その地域での暮らしの情報や、町の情報、その他移住に関して有益となる情報が掲載されていることが多くあります。
それにより、移住後の生活をある程度イメージすることができます。
特に地域の人口減少が大きな問題となっている自治体は、それらの情報発信に力を入れていることが多いようです。
そのような地域は、移住後も新たな住人に対して、何かと世話をやいてくれることも期待してます。
空き家バンクを利用する際のデメリット
1.問題のある空き家も登録されている
最大のデメリットとしては、問題のある空き家も多く登録されていることです。
中には、不動産業者に売却を依頼したところ、大きな問題があるため扱いを断られたような物件も混じっています。
空き家バンクでは、登録された空き家について細かい調査をすることはありません。
あくまでも空き家を紹介するだけであり、利益を目的としていないためです。
長く空き家の状態となっていたため、あちこちに傷みがあり、大規模な修繕が必要となるケースもあります。
外見は特に問題がないようであっても、床下に白アリが大量発生していたとか、天井裏に害虫や害獣が大量に生息していたケースもあります。
それらの場合、購入しても修繕に多額の費用と時間がかかり、すぐに転居できないことがあります。
2.情報が古いままになっているサイトがある
自治体によっては、空き家バンクサイトの更新をなかなか行わないところもあります。
そのため、既に売却されていたり、賃貸されている物件が空き家として掲載されたままになっていることもあります。
3.「安い」とは一概に言えない物件も多い
空き家バンクの空き家物件は、不動産業者を通さずに販売価格や家賃が設定されていることがほとんどです。
そのため、地域の相場よりは少し安いけれど、修繕費用を考えると割高になってしまうといった価格設定になっている物件も多く存在します。
空き家バンクを利用する際に気をつけること
まず、現地に出向き、自分自身の目でつぶさにその空き家の細かい部分までチェックすることです。
そこで、明らかに問題がある部分があるなら、購入を断念するか、もしくは建築士や工務店などに依頼して、修繕をする場合の費用の見積もりをとることです。
その際、可能であればその空き家全体をプロの目でチェックしてもらい、他に修繕が必要な箇所がないか、ある場合はどれくらいの費用がかかるのかの見積りを出してもらいましょう。
さらに、現地の不動産業者などに相談して、その空き家の情報を得ることもいい方法です。
そこで単に「教えてくれ」とたずねたところで相手にされないことも考えられるため、「この空き家を購入した後、転売を考えているのだが」とたずね、どれくらいで売れるのか、仲介を受けてくれるかを確認しましょう。
そうすれば、その空き家の建築条件や、その地域の建築協定などを調査、確認してもらえるでしょう。
安いという理由だけで、よく調査をせずにすぐに購入してしまうことは避けるべきです。