近年空き家は地方だけではなく、都市部でも増えています。
地方において深刻な問題となっている空き家問題ですが、今や都市部においてもその問題が目立つようになっています。
国土交通省の調査によれば、空き家の所有者のうち、およそ7割はその空き家を放置したままであるというデータがあります。
古くなった空き家から別の住宅に転居した後、売却も賃貸もしないまま放置していたり、相続した空き家を手つかずのまま放置していたり、管理さえもしていない方が多くいるようです。
放置された空き家の増加により、老朽化した空き家がその地域の景観を悪くする、不法投棄の繰り返しによって所有者の知らないうちにゴミ屋敷と化す、などの問題が起こっています。
さらには、地震などの自然災害が発生した際に、倒壊して周囲の住宅に被害を及ぼしたり、道路をふさいで避難路をふさいだり、緊急自動車の通行を妨害するなどの弊害を及ぼす可能性もあります。
なぜ空き家が増えるのか、空き家が増える原因
では、なぜ放置された空き家が増え続けるのでしょうか。
最も大きな原因と考えられるものとして、中古住宅に対する需要の低下が考えられます。
現在、新築住宅の販売価格はかなり安い水準になっています。
中古住宅についても、人気があるのは築年数が比較的浅く、傷みの少ない程度のよい物件です。
古い住宅は販売価格がいくら安くても、住めるようにするためのリフォーム費用を考えると、割高になってしまいます。
それなら、数割程度価格が高くても、程度のよい築浅の中古住宅か、新築の住宅に目が向くことは当然でしょう。
また、賃貸用として使うことを考えても、老朽化して傷みが激しい住宅はなかなか借り手がつきません。
現在は、賃貸市場においても賃料の相場は低く抑えられがちになっています。
古い住宅だからといって賃料をかなり安くしても、他の住宅と比べて極端に安いといった感があるわけではありません。そのため、「少々家賃が高くても、きれいな家に住みたい」と、古い空き家は敬遠されることになります。
では、リフォームをしてきれいにすればいいのではとお考えの方もいらっしゃるでしょう。
しかし、古い空き家をみちがえるようにきれいにするには、建て替えをするくらいの費用がかかります。
それだけの費用をかけたところで、その金額を売却益や賃料で償還できるとは考えにくいでしょう。
つまり、古くなった住宅は買う方がいない、売りたくても売れない、賃貸にしたくても借り手がいない、もはや市場価値がなくなってしまっているということです。
そのような使い道がない空き家に対して、できるだけお金をかけたくないと考える方も多く、管理やメンテナンスをしないまま放置されたままになることも多くあります。
そのことにより、ますます老朽化が進み、資産価値が低くなっていく悪循環が進むのです。
また、税法上の問題も空き家の増加を後押ししています。
老朽化した空き家を解体して更地にした場合、不動産の評価が変わり、固定資産税が高くなってしまいます。
費用をかけて古い空き家を解体、撤去したところで、支払わねばならない税額が増えることになるわけで、「ではそのままにしておこう」と考える所有者が多いことにもうなずけます。
更地にしたところで、再建築不可の条件がついているため、新たな住宅を建てることもできないといったケースもあります。また、古い空き家の場合、現在の建築基準法では同じ規模の住宅を建てることができないケースもあります。
どのように手を加えたところで資産価値を高めることができないケースも多く、処分できないまま放置される空き家が増えているのです。
空き家を無料で引き取り、リフォームして賃貸で稼ぐ
40代の会社員・野口さん(仮名)は、空き家バンクを利用して老朽化した空き家を無料で手に入れ、リフォームして賃貸物件として運用しています。
もともと不動産投資に興味を持っていたのですが、一介の会社員ですので豊富な資金を持っているわけではありません。
そのため、できるだけ安く不動産物件を買って、収益を上げられないかと考えていました。
安く買った家にリフォームを施して転売する、あるいは賃貸として運用する方法です。
そこでまず、不動産情報サイトを使って安く購入できる家を探しました。
100万円を下回るような安い家も何軒か見つかりました。
しかし、価格は安いのですが、借地権がついており、月々の地代を考えるとけっして安いとはいえない家とか、駅からバスに乗り、バス停からさらに延々と歩かなければならない家など、安いことには何らかの理由がある物件ばかりでした。
次に、裁判所の競売物件の購入を考えました。
市場価格の相場よりも数割安く購入できると聞き、専門サイト等で物件の情報を閲覧しました。
確かに売却基準価額はかなり安いようです。
ただ、短期賃借権がついていたり、管理費の滞納があったり、占有者がいたり、これは素人の手には負えないのではとの懸念もあり、また、過去の落札結果を見ると、売却基準価格の何倍にも跳ね上がっている物件も多くありました。
競売での購入を考えるなら、プロのサポートがないと困難だと判断し、断念しました。
それでも不動産投資をあきらめきれず、情報を集めた末にたどりついたのが空き家バンクの利用です。
空き家バンクにはかなり安い物件が多く掲載されていました。
不動産情報サイトには載っていない物件も多くあります。
不動産業者としては、売却価額が安いので、仲介しても微々たる額の手数料しか得られないため、扱おうとしないのでしょう。
安い物件のうち、最寄駅から徒歩10分以内であることを条件にして、購入候補をいくつかピックアップして、実際に現地に足を運びました。
そのうち、これはどうにもならないだろうと思われるほど老朽化が進んだ物件を候補から除き、比較的程度のよさそうな物件にしぼりこみ、行政の担当者立ち会いのもとで、地元の工務店に修繕が必要な部分のチェックと見積もりとをしてもらいました。
かなり古い家でしたが思っていたほど傷みは少なく、水回りの補修が必要と指摘された他は、さほど大きく手を加える必要もなかったので、その家を買うことにしました。
空き家バンクは基本的に所有者と購入希望者が直接取引をすることとなっています。
物件によっては仲介業者が間に入ることもあるようですが、その家は所有者と直接交渉をする形式です。
程度はあまり悪くないのに、安く売られていたのは、築年数が古いためなかなか買い手がつかず、売値を下げ続けたためだとのこと。
所有者はもともとその家を相続したのですが、自分の住む家は別に持っており、売ることも賃貸に出すこともできずもてあましていたということでした。
そこで思いきって、無料で引き取らせてもらえないかと交渉しました。
保有していても固定資産税がかかるだけです。
それなら手放したほうがいいのではないかと話すと、案外簡単に応じてもらえました。
その無料で入手した家を水回りの修繕と、壁紙の貼り替え程度のリフォームで、シェアハウスとして貸し出しました。
2LDKの間取りでしたので、2つの部屋をさらに2分割して4人が住めるようにしました。
その運営方法は当たりました。
長期にわたって住み続けるとなれば、古い家は抵抗がありますが、1ヵ月か2か月の短期間だけ住むとなれば、家の古さは気にならず、安ければいい、そのような方が出入りを繰り返しています。
おかげで、毎月多くはありませんが固定収入を得ています。
古い空き家でも使い方次第で利益を出せる
このように、転売や一般的な賃貸が難しくても、頭を使えば何らかの運用方法があるものです。
購入価格を安く抑えられる空き家は、不動産投資の初心者でも扱いやすいのではないでしょうか。