土地家屋調査士は不動産登記のスペシャリストとして、司法書士に並ぶ人気の高い資格です。
その仕事内容や魅力、将来性について述べてみたいと思います。
土地家屋調査士の仕事内容とは
土地の測量や表示に関する登記を行う専門家として活動します。
依頼を受けた土地や建物といった不動産の調査や測量を行い、どのような形状で存在するのかを調べます。
また何に利用されているのかも明確にします。
さらに不動産の表示に関わる登記申請の手続きを代理で行い、土地の境界についての紛争が起こった時は解決の手続きを代理で行います。
そして家を建てた時に必要となる登記を法務局で行います。
部屋の広さや階数、建物の構造といったことを登記するわけですが、これは土地家屋調査士の独占業務と言えます。
また、このような表題登記を行うためには現場で測量を行い、図面を書く必要があります。
その上で登記申請書を書いて登記手続きをします。
そのためには高度な測量の技術と登記申請に関する知識が必要になります。
測量のためには測量機材を現場に持ち込んで座標データを取り、時に隣の土地の保有者と協議を行ったり境界表を設置します。
さらに土地を分けたりする場合には、地積測量図を法務局に提出しますが、細かな座標データを図化して一緒に添えることになります。
隣の土地の保有者などから同意書をもらうことも必要になってきます。
土地家屋調査士になるために
国家資格である土地家屋調査士になるには、試験を受けて合格する必要があります。
その上で土地家屋調査士の名簿に登録されることで活動を始めることになります。
試験に合格したら、実務として測量や不動産登記を行い専門知識を身に付ける必要があります。
そのような実務経験を積むために事務所に就職して一人前になることを目指します。
試験について
受験資格は誰にでもあります。
毎年8月の第4日曜日に筆記試験を行い、11月上旬の平日に口述試験を行います。
口述試験は筆記試験の合格者のみが対象となりますが、ほとんど本人確認のようなものです。
筆記試験は午前と午後の部に分かれますが、午前は測量知識を問う問題が、午後には不動産登記法を中心とする法律知識を問う問題が出題されます。
午前も午後も、多肢択一式の問題と記述式の問題から構成されます。
多肢択一式(マークシート)の内容は民法3問、不動産登記法16問、土地家屋調査士調査士法1問となっています。
記述式の問題は電卓や定規を使って土地や建物の面積計算をしたり、形状を作図したりします。
作図はあくまでも見取り図程度のものですが、数学の知識は必要です。
とはいっても、ある程度勉強しておけば計算はパターン化できるので、電卓を押すだけで結果が出るようになります。
午前の試験には免除制度もあります。
測量士補、測量士、1級建築士、2級建築士の有資格者は試験を免除されます。
そのために比較的取得しやすい測量士補を取得してから受験する人もいます。測量士補の試験は5月下旬で合格発表は7月初旬となっています。
勉強方法
例年合格率は8%ほどの難関でもあるので、資格予備校(スクール)に通ったり通信教育を受けて勉強します。
合格者の平均年齢は39歳とやや高めとなります。
多くは仕事の合間に勉強をするようです。
勉強方法は独学が40%強、通学が20%強で通信教育が30%強となっています。
短期間で勉強するのであればスクールに通って効率的に学習しているようです。
スクールはKECやユーキャン、日建学院や東京法経学院などの土地家屋調査士コースがあります。
日建学院は通信教育も行っています。
都市圏のみスクールを持つところもあるので、それ以外の地域の人は通信教育を受けることになります。
スクールの費用は、全くの初学者の場合で30万円から50万円ほどです。
資格取得後の就職先
資格を取得した後は、とりあえず就職して実務経験を積む必要があります。
就職先は測量会社や地図会社、土木建設会社や建設コンサルタント、あるいは土地家屋調査士事務所などがあります。
仕事内容は測量を行ったり登記事務をしたり、あるいは境界の立ち合いやCADによる図面作成となります。
土地家屋調査士の年収について
土地家屋調査士の年収で最も多いのが400万円から600万円ほどと言われます。
サラリーマンとしての給与としても、独立開業した場合の経費を引いた実質年収としてもこのくらいでしょう。
もちろん、独立した場合には努力次第で年収1000万円台を目指すことができます。
ただし、開業する場合には測量の道具が必要となるために初期投資で器材を揃えることになります。
新品で揃えれば200万円ほどはかかるでしょう。
また測量の補助者を雇うことにもなるので、経費がそれなりにかかります。
土地家屋調査士の魅力とは
何と言っても家を建てた時に必要となる登記に関して独占業務となる強みがあります。
また土地の利用状況を登記するための公共の仕事も多いものです。
土地の境界をめぐるトラブルも多く、その解決のための需要も今後は続くと見込まれています。
ただし、日本の総人口や公共工事の数が減少しているのも事実ですし、仕事量もそれに伴って減少傾向に向かうとの見方もあります。
そのために宅建や行政書士などの資格を合わせて取得するケースも増えています。
司法書士や行政書士の仕事は土地家屋調査士の仕事と一連の流れにあるので、これらの資格と兼務している場合が多くみられます。
土地家屋調査士に向いている人
この仕事は屋外での測量作業が必須です。
天候状態や土地の形状によっては難儀することもある上に、緻密な制度が求められます。
そのためにどんな状況でも集中できるタフさを持つ人が向いていると言えます。
不動産の表題登記は厳密な運用がなされているので、タフさに加えて緻密な作業も得意とする必要もあります。
さらに土地家屋調査士は多くの人と打ち合わせや交渉を行います。
そのためのコミュニケーションスキルも必要となってきます。
また測量技術も進歩し続けているので、絶えず勉強をすることを苦に思わない人も向いていると言えます。
終わりに
土地家屋調査士は需要の絶えない業務に携わることで安心感の持てる資格であることが分かります。
業務は屋外でのフィールドワークと緻密なデスクワーク、さらには様々な人とのコミュニケーションを必要とするなど色んな面を持つ内容であると言えます。