平成27年1月1日より、相続税に関する改正が適用されています。
基礎控除の減額や相続税率の一部引き上げなど、その内容は実質的な増税となっています。
そこで是非知っておきたいのが節税対策です。
特に不動産を利用しての節税効果は非常に高いので、相続額が多い場合には是非知っておきたいものです。
相続税の計算方法とは?
まず最初に、相続税の計算方法について簡単に知っておく必要があります。
相続の対象となるものは不動産や現金、有価証券など色々とありますが、それらを全て合算した上で、借入金や未払金などの債務を引いて正味の遺産額を算出します。
そこから基礎控除額を引きます。
基礎控除額は3000万円+600万円×(法定相続人の数)となります。
この金額に対して税率が掛けられて算出されます。
税率は遺産額が1000万円以下で10%で額に応じて8段階に分かれ、6億円を超えると55%となっています。
不動産が相続税対策になる理由
例えば現金1億円をそのまま相続する場合、そのままの金額が相続税の課税対象となります。
けれどもその1億円を使って不動産を購入したとします。
すると不動産は評価額という形で課税対象額が算出されることになります。
大雑把に言うと、土地はおよそ購入金額から20%ほどが減額されて評価され、建物は建築費のおよそ60〜70%が評価額となります。
これが節税の仕組みとなるわけです。
不動産の評価方法とは
さらに詳しく、不動産の評価方法について述べてみます。
まず土地ですが、基本的には路線価が適用されます。
これはおよそ取引される実勢価格の80%ほどになります。
ただし地域によっては、路線価が定められていない場所があります。
この場合には固定資産税評価額に定められた倍率を掛ける倍率方式が採用されます。
土地の形によっては、間口が狭い、宅地が不整形であるなどの特殊な宅地があります。
この場合には減額されて算出されます。
建物の場合には、固定資産税評価額がそのまま適用されます。
固定資産税評価額とは、国が定めた建物の時価におよそ70%を掛けたものとなります。
ちなみに建築途中の家屋の場合には、費用現価に70%を掛けた額となります。
費用現価とは、総工費に進捗率を掛けたものです。
また、幾つかの条件を満たす場合、小規模宅地等の特例を適用されてさらに控除額が増えることになります。
マンションの評価額について
マンションの場合には、まずマンション全体の土地と建物の評価額を算出します。
それに対して登記簿謄本に記載されている持分割合を掛けることで算出します。
総戸数にもよりますが、一般的に戸建て住宅よりも土地の比率が少ないことから、評価額は少なくなる傾向があります。
さらに高層マンションとなれば、さらに土地の比率は少なくなり、物件によっては時価の5分の1にもなるケースがあります。
そのために、相続税対策として高層マンションを購入する人が多いことから、平成27年11月に国税庁がこの節税対策に対しての課税強化をするように全国の国税局に指示をしたとの報道がありました。
注意しておきたいこと
不動産が相続税対策になることはわかりました。
では何も問題がないかというと、実はそうではありません。
例えば相続する現金全てを使って不動産を購入したとします。
では、肝心の相続税を納める現金はどうするのかということです。
現金ならすぐに使えますが、不動産はすぐに現金に換えるというわけにはいきません。
さらに購入した後にその資産価値が下がる可能性は十分にあります。
この点に関しては購入する不動産を選ぶ際に大事なポイントとなるので、後で説明します。
さらに、相続人が複数いる場合にどのように不動産を分割するのかも課題となります。
相続税対策を目的とした不動産の購入の方法
よく相続税対策で、借金をして投資用不動産を購入することを勧めるような情報があります。
確かに借金は遺産額から差し引かれるので、相続税をさらに少なくします。
けれども、残った現金に対して課税されるので、結局納める税額そのものは変わりはありません。
むしろ借金の金利負担が発生するので損をすることになります。
つまり、あくまでも相続する現金を不動産に換えるというイメージで捉えることが大切というわけです。
ただし、投資用として購入することは意味があります。
相続する不動産が賃貸住宅であれば、建物の評価額はさらに70%に減額されます。
これは賃借人にも一定の権利があるものと見なされることが理由です。
お得な不動産の購入方法について
相続税対策として不動産を購入するためには、抑えておくべきポイントがあります。
それは、購入金額に対していかに評価額が少なくなるようにするかです。
例えばタワーマンションを購入するとします。
全く同じ専有面積であれば、下層階でも上層階でも、評価額は同じです。
けれども販売価格は上層階の方が高いものです。
つまり、上層階の方が購入に使用した現金に対しての評価額が低くなり、その結果相続税も少なくなるわけです。
しかも総戸数の多い購入マンションならば、土地の配分が少ないのでさらに評価額は少なく算出されます。
そして賃貸として貸し出すことによって、さらに建物の評価額を30%減額させることができます。
相続税対策でのマンション購入の注意点とは?
相続税対策でマンションを購入する際に、知っておきたいことがあります。
現金をマンションに換えて、さらに現金に換える場合を考えます。
そこで大切なことは、いかに値下がりせずに売却できるかということです。
そのためには、新築物件を購入することは避けるべきと言えます。
新築マンションには、販売業者の利益となるプレミア価格が上乗せされています。
つまり、すぐに売却してもプレミア価格の分だけ値下がりすることになります。
そこで狙うのは値下がりしにくい中古物件となります。
さらに、遺産を分割するために高額なマンションを1戸購入するよりも、換金性の高い価格帯で複数戸購入することもポイントです。
また、賃貸需要の多い地域を選びますが、注意が必要なのは地方の大学近くです。
賃借人に学生を当てにできますが、実は大学のキャンパスが都心へ移転するケースは多いものです。
その計画が無いかどうかを確認することが大事です。
終わりに
相続税対策に現金を不動産に換えることは、相続税を少なくする効果が大きいことがわかりました。
ただし、まず相続税を納める現金は用意しておくことと、資産価値が落ちにくい不動産を選ぶことが大切となります。