今年(2016年)3月に国土交通省が発表した公示地価は、8年ぶりに全国平均がプラスになりました。
そして2020年に開催される東京オリンピックの影響とみられる不動産価格の上昇も話題となっています。
そのような現在の状況と、今後の相場予測について述べてみます。
東京湾岸エリアのマンション価格の上昇
オリンピックの主要施設は、湾岸地域を中心に狭いエリアに集中しています。
そこでの施設整備に官民合わせて3000億円を超えるプロジェクトが進行しています。
それを受けて、勝どきや晴海、豊洲といった湾岸エリアでは新築と中古の分譲マンションの需要が高まり、その価格も上昇しています。
さらに建て替えが予定されている国立競技場周辺の青山や神宮外苑エリア、そして湾岸エリアのアクセス拠点となる品川周辺も都内の他の地域と比べると地価の上昇率は高くなっています。
不動産価格の上昇状況について
新築マンションも中古マンションも、共に2015年9月度では売り出し価格は1割上昇しています。
さらに住宅金融支援機構が発表した「フラット35利用者調査2014年度」によれば、2006年上期に5.8倍だった新築マンション購入における年収倍率は、2014年下期には6.8倍になっているとしています。
この要因となっているのは、東京オリンピックを控えた地価の反転上昇と、復興需要を含めた建設需要におけるマンション建設費の上昇です。
さらに拍車をかけているのが、外国人による投資目的の不動産購入です。
特に中国人投資家の影響によって、東京のマンション価格は10%以上押し上げられているとの試算も出ています。
これは2008年の北京オリンピック開催時における、北京エリアの不動産価格高騰による東京エリアの上昇を見込んでのことと見られています。
東京オリンピックにより不動産相場は上昇する?
現在のマンション価格を含む不動産相場の上昇は、オリンピックによる今後の上昇を見込んでの投資資金流入が大きく関係しています。
そこで気になるのは、本当にオリンピックによってさらに上昇するのかということです。
実はオリンピック開催によって景気が浮上したり、あるいは不動産価格の上昇にダイレクトにつながるのは発展途上国であるとの意見があります。
2008年の北京オリンピックでは、確かにその効果は確認されています。
けれども2012年のロンドンオリンピックでは、景気との関連性は確認されていません。
そして、東京オリンピックが終わった後の不動産相場は下落するとの意見が多く見られています。
気になる不動産の需給関係
不動産価格は様々な要因で変動します。
そのひとつが需給関係ですが、現在湾岸エリアを中心としてマンション建設が盛んに行われています。
例えば東京都中央区の晴海エリアにおける選手村跡地には、6000戸規模の住宅建設計画が立てられています。
そして現在もオリンピック開催に向けて、高層マンションの建設計画が立てられていますが、その戸数は1万戸とも言われます。
果たしてそれほどの需要が見込めるのかが課題となっています。
気になる人口の動向
総務省が発表した、2013年度の「住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家の数は820万戸となっています。
これは総戸数の13.5%に相当します。
東京では81万7000戸と、全国一の戸数となります。そしてその東京に流入している人口は、2020時にピークを迎えて、その後は減少に向かうとの予測があります。
総務省の発表によると、「2020年に東京の人口は1335万人のピークとなり、その後は減少に転じて2070年には1000万人を割り込む」としています。
また、バブル期に住宅を購入した団塊の世代は2020年には70代となり、その後家を離れて老人ホームなどの施設や医療機関に入ることも予測されます。
つまり、空き部屋がさらに増えると考えられているわけです。
人口の減少が続く地方都市では、すでに不動産価格の下落がみられています。
東京でのマンション建設ラッシュに対して、どれほどの需要があるのかが懸念されています。
オリンピック後に不動産価格は下落するのか
需給関係から考えると、東京オリンピック後には不動産価格は下落に向かうと考えられます。
また、現在投資目的で購入している外国人投資家の、利益確定のための売却も増えるとなればさらに需給関係は悪化することが予測されます。
また、不動産投資ファンドの動きにも注目されています。
これまでは収益用として購入していた不動産を、リノベーションを施して実需用に分譲する傾向が見られるのです。
賃料の上昇が期待できないことにより、品薄感のある今のうちに売りさばこうというわけです。
他にもオリンピックによる経済効果がもたらす経済成長も、逆に不動産相場には逆風になるとの見方もあります。
現在は日銀が国債を買い入れることなどにより、日本の金利はかなり低く抑えられています。
それがマンション購入にもつながっているわけです。
けれどもオリンピック効果によって経済効果が現れると、インフレが進むことも考えられます。
日銀が政策目標としている名目インフレ2%が達成されると、金融緩和が不要となります。
これは金利の上昇につながります。
あるいは日本の国債は格付けが引き下げられましたが、今後国債の評価がさらに下がることにより価格が下落すれば、金利上昇につながります。
このような金利の上昇は不動産購入意欲を低下させることにつながります。
不動産相場の下落は限定的との見方も
一方で、東京オリンピック開催後の不動産相場の下落は限定的とする見方もあります。
というのは、現在のマンション価格の上昇の中で、住宅購入を控えている人が購入機会をうかがっている点に注目しているからです。
下落が予測されるならば、それまでは様子見をしようというわけです。
さらに、2018年度の法人税引き下げが企業の不動産による内部保留につながるとの予測があります。
現在、企業の内部保留に対しての課税が検討されています。
けれども法人税減税によって、企業体力を増やす不動産取得の需要が増えると見られるわけです。
つまり、オリンピック後の不動産価格の下落により、安く購入できる機会を得ることになります。
終わりに
大筋では東京オリンピック後には、需給関係により不動産相場は下落に向かうと予測されています。
けれどもそれが新たな購入機会につながるとも考えられています。
現在計画されているマンション建設に対して、どこまで需要があるかがポイントというわけです。